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58巻4号 >

Please use this identifier to cite or link to this item: http://hdl.handle.net/11266/5818

Title: ネイチャーライティングの一例 : 『序曲』 再考
Other Titles: An example of nature writings : reconsideration of The Prelude
Authors: 石原, 久子
Ishihara, Hisako
立正大学経済学部
Rissho University
Keywords: ネイチャーライティング
大自然
交感体験
預言者詩人
Issue Date: 20-Mar-2009
Publisher: 立正大学経済学会
Abstract: 自然と人間との関わりに注目して考察している文学は,ジャンルにかかわりなく,ネイチャーライティングの文学とみなすことができる.本稿では,ネイチャーライティングの一つの例として,イギリスロマン派詩入ウィリアム・ワーズワスの長編詩『序曲』を取り上げる.近年,エコクリティシズムという方法論が盛んになってきた.これは,広く文学と自然環境との関わりを考察し,文学研究の立場から,深刻化する環境破壊への提言を模索する試みである.地球規模の環境危機に直面する現代社会に生きる者として,自然を主題とする文学は単なる過去の遺産ではなく,新たな価値をもつものとなる.ワーズワスの自然体験は独特である.大自然と人間精神とが直接的に対話・交流し,お互いに高次元の状態へと高めあうのである.これを交感体験と呼ぶ.このような自然体験は,目の前に見える自然の形象物はもはや実体を伴わなくなり,主体と客体は融合して一体化する.その結果として,眼前の風景が自分の内部精神が投影された心象風景のように思われるのである.『序曲』は詩心の萌芽および成長発達過程をたどったものであるが,心身の成長に伴って自然との交感体験を積み重ねることによって,精神の能動的な働きの度合いが徐々に増幅してくる.2回の登山体験は,自然との交感体験の集大成ともいえる啓示的な意義深い体験として重要である.それは,大自然が人間の精神の働き様を具現化している風景をまざまざと目撃して,体感したからである.『序曲』の結論として,ワーズワスは大自然の預言者として,人々に自然体験の意義深さと貴さ,そして,人間精神の働きの偉大さを語り伝えようという力強い決意を表明する.これは預言者詩人としての意思表示である.ワーズワスは,科学の進歩と都会の発展に伴って自然破壌が急速に進行した時代背景にあって,自然の大切さを主張し,自然を軽視する社会に異議を唱えて警鐘を鳴らした.この意味でも,ワーズワスはイギリス文学におけるネイチャーライティングの先駆けの詩人として,注目すべき存在であるといえる.
URI: http://hdl.handle.net/11266/5818
Appears in Collections:58巻4号

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